オンライン学習コミュニティの作り方(コンセプト編)

ゲームの応用

人を熱中させるゲームの手法を他分野に応用することを「ゲーミフィケーション」と言います。
 
ゲーム=不真面目なもの(子どもの遊び)
 
という認識はいまや一昔前のものになり、ゲームの手法を使って集客したり、顧客ロイヤリティを高めるなど、ビジネス分野での様々な応用が進んでいます。

ゲームは人を熱中させ、いつの間にかのめり込ませます。ギャンブルも、スポーツも、オタクの世界も、株式投資や不動産投資もビジネスも、人を熱中させるものには、すべてゲーム的な要素が含まれています。
 
科学者が実験を繰り返しながら新しい法則の発見を目指すのは「宝探しゲーム」に近いところあり、自動車やロボットの開発も、料理も、ゲームの延長にあると言えます。
 
マネジメントの世界でも、金銭的な報酬を中心にした「外発的動機づけ」の世界から、満足感や幸福感などの「内発的動づけ」へとフォーカスが移ってきています。
 
その内発的動機を喚起するものがゲームという訳です。
  
もちろん今も昔も外発的動機を喚起するお金は重要ですが、それと同じぐらい自分を内部から突き動かすようなモチベーション(Drive)が重要になってきているのです。
 
だからこそ「ゲーム」なのです。
 

もちろん学習・教育の世界も例外ではありません・・というより、教育こそゲーミフィケーションを最も活用できる分野です。学校も塾も、専門学校も、大学も、社会人向け大学院も、そして社内大学も、間違いなくゲーミフィケーションで生まれ変わります。
 
特にモチベーションの維持がネックになりやすいEラーニングの世界において、ゲーミフィケーションは最も相性の良い存在なのです。


ゲームの必須要素

 
ゲーミフィケーション理論によれば、ゲーム設計において代表的な要素は下記のようなものです。
 
▼基本
・ゴール(何を目指すのか)
・ルール(ゴールを目指すにはどんな約束事を守ればいいのか)
・デザイン(ゲームの世界観)
・演出(プレイヤーをのめり込ませるための仕掛けやイベント)
 
▼ゲーム性の設計
・自由度(プレイヤーが自律的に行動するための適度な自由度がある)
・競争と協業(ゴール達成のためには戦ったり協力したりする必要性がある)
・即時フィードバック(自分のプレイ結果がすぐに分かる”見える化”)
・報酬(ステージを進むプロセスで報酬が得られる)
 
 
▼導入
・ガイド(ゲームの世界に誘う案内役や、ゲーム場の仕掛け)
・難易度(プレイヤーのレベルと、ゲームの難易度がマッチすると「のめり込み」状態が発生)
・見える化(プレイヤーが自分の状況を把握できる)
・インターフェイス(ユーザーが使っていて違和感を感じない事)
・効果音やバッググランドミュージック
   
うまくいっている職場は、上記のような要素をうまく満たしているのではないでしょうか。
 
もし、Eラーニングを「ドラクエ」や「ファイナルファンタジー」をプレイするように楽しめたら面白いと思いませんか?もちろんそれは可能です。
 
・遠隔教育(Eラーニング)で修了率が低い
・受講生の参加率が低い
 
などの問題が発生するのはゲーム的な設計が弱いのです。
 
もちろん各分野が本質的に持っている面白さによって、設計が少々マズくてもうまく行くパターンはありますが、そうであっても設計がよければ、もっともっと価値ある学習体験を提供できるはずなのです。
 
フローパッドもゲームとリアルを融合し、加速するようなソーシャルラーニングプラットフォームを目指しています。
 

 FlowPADのステータス表示


レベルに合わせて活用するのがキモ

 
ここで重要なのは「ゲーム」はあくまで”手段”であって”目的”ではないという事です。いわば、プレーヤーを目的地に運ぶための入れ物(ビークル)です。
 
ナムコやコーエーでゲーム開発を手掛けられ、現在はゲーミフィケーション研究者として活躍されている岸本好弘氏は、その限界について、次のように説明されています。
 
「ゲーミフィケーションは,モチベーションの低い人たちに、
効な手法です。彼らの大半は,何らかのつまずきが原因で,本来持っているはずのやる気を失っているだけで,そのやる気をアップさせるきっかけとなるのががゲーミフィケーションです。
ちなみにゲーミフィケーションは,その事柄に対してモチベーションが
高い人たちにとっては,余計なものになってしまうこともあります。」
 
出典:「意外なところにゲーム人 第1回:大学の講義で使われる「respon」をアーケードゲームのノウハウで作り上げた森田真基氏」
 
要は「相手のレベルによってゲーミフィケーションの強弱をコントロールが必要」ということです。
 
ゲーミフィケーションを誤って使うと、プレイヤーに
 
「なーんだ。これってしょぼいゲームみたいなものか」
 
と設計者の意図が見抜かれてしまい、シラケてしまいます。
 
例えば、ディズニーのサンキューカード(素晴らしい働きをしているクルーに対し、マネージャーが評価カードを渡す)をマネして、同じような仕組みを導入したところ、わざとらしい評価ポイント稼ぎ自体が横行して、本来の「顧客満足度アップ」という目的が忘れられて暴走したり、
 
「そんな子供騙しみたいなポイント稼ぎなんてアホらしくてやってられるか」
 
とベテラン社員のやる気を落としたりするようなケースが失敗例に当たります。
 
なぜやる気が落ちるのかといえば、”できる人”は、すでに自分でゲームをデザインする能力を持っていて、そのゲームを仕事で楽しんでいるからです。
 
自分で自分の仕事をゲーム化し、PDCAを回しながらブラッシュアップできるプロフェッショナルに対して、外部から提供される質の低いゲーム(クソゲー)の存在は邪魔者以外の何ものでもないのです。
 
むしろこのレベルの人にマネジメントが求められるのは、プロが仕事に没頭(エンゲージメント)しようとするのを邪魔する要素(ノイズ)をできるだけ下げる事です。
 
例えば、活動量計(腕にはめておくと、消費カロリーや移動距離を数値化してくれるApple Watchやfitbitのようなデバイス)のように、自分のパフォーマンスを数値化して知らせるだけで、本人は自分で「改善ゲーム」を組み立てられるのです。
 
Eラーニングの学習プログラムにおいても、「ゲーム」の存在自体が過剰に目立ってしまうのは、まだまだ完成度が低い事を意味しています。ゲームはばっちり機能していても、最終的には、それが意識されないような「透明」な存在になる必要があるのです。
 
そして、レベルアップに従って、本人がゲームをカスタイマイズしたり、新しいゲームを自分で作って次なる高みを目指すステージまで進む事が出来れば、大成功です。


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