FlowPAD®(フローパッド)は「対面で集まらなければ、ちゃんとした対話や学習はできない」という固定観念にチャレンジすべく開発をスタートしました。
新型コロナウィルスの影響で、日本でもZOOMをはじめとしたオンライン会議システムが一気に普及し、古い常識(思い込み)が一気にアップデートされつつあります。
ただオンライン会議も同じ時間を拘束する「同期(リアルタイム)」型のコミュニケーションという点では、従来の対面方法に比べて、まだまだブレークスルーは起きていません。
またアイデアを出しながらブラッシュアップしてくブレインストーミング(ブレスト)は、やはり実際に会って話さなければ無理だ(その方が効率が良い)という「常識」もまだまだアップデートされていません。
本当に「同期」でなければ、ちゃんと対話できないという「常識」は本当に正しいでしょうか?アイデアが飛び交うディスカッションでは、オンラインでは無理なのでしょうか?
最近はメールの代替として、チャットツールが導入する企業が増えていますが、これらを使った非同期(同時間ではない)対話と、リアルタイムの対話は何が違うのでしょうか?
音声や画像を使ったコミュニケーションと比べ、文字(テキスト)ベースのコミュニケーションは、それぞれどういった価値の違いがあるのでしょうか?
またデジタルを使って、深い対話を、効率的かつ効果的に実現するために、どんなツールが求められるのでしょうか?その一つの答えとなるべくFlowPADは開発されています。
「リアル(同期)」と「ウェブ(同期&非同期)」を使い分けるのがキー
SNSやメッセンジャー、ウェブ会議やチャットをはじめ、ネット上には優れたコミュニケーションツールがすでにたくさん存在しています。まずは各サービスの特徴を簡単に比較してみます。
コミュニケーションサービスの比較 | ||||
掲示板型 BBS |
チャット |
ビデオ会議 | リアル会議 集合研修 |
|
代表的なサービス | フローパッド | 各種メッセンジャー Slack |
Zoom Google Meet |
- |
表示形式 | スレッドと チャットのハイブリッド |
タイムライン チャット |
動画/チャット | - |
タイプ (同期/非同期) |
非同期型 |
非同期型 |
同期型 |
同期型 |
リアルタイム性 | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
多人数での ディスカッション のしやすさ |
◎ | ○ |
△ 参加者が多いと発言者が かたよりがち |
○ |
複数テーマの議論 | ◎ 俯瞰しながら、同時並行で 対話を進められる |
X | X |
X |
発言のしやすさ | ◎ | ◎ | X |
△ |
発言履歴の検索 | ◎ | △ 時系列にさかのぼれるが 検索機能は貧弱 |
X 録画を見直す必要があり ”検索”はできない |
△ |
時間あたりに 交換できる情報量 |
△ 比較的長文が得意 |
◎ 短文では優位性が高い |
○ | ◎ |
自由度 | ◎ 時間を気にせず じっくりテーマを掘り下げられる |
◎ | △ 地理的制約はないが、 特定の時間を拘束する |
X 特定の場所と時間を拘束 |
論理的思考力 | ◎ |
△ 細切れで繋がりがわかりにくい |
△ ファシリテーション次第 |
△ ファシリテーション次第 |
備考 | オンラインコミュニティ向き |
会話の代替として便利 |
リアル会議/研修に |
運営者も参加者も 慣れているのでストレスがない 親密度が高くなる 空気が読める (感染リスクあり) |
コミュニケーションサービスの比較 | ||||
電子掲示板型 Thread float/BBS |
チャット |
ビデオ会議 | リアル会議 集合研修 |
|
代表的なサービス | フローパッド | 各種メッセンジャー Slack Chatwork |
Zoom Google Meet WebEx |
- |
表示形式 | スレッドと チャットのハイブリッド |
タイムライン チャット |
動画/チャット | - |
タイプ (同期/非同期) |
非同期型 (同時接続不要) |
非同期型 (同時接続不要) |
同期型 (同時接続) |
同期型 |
リアルタイム性 | ○ | ○ | ◎ | ◎ |
多人数での ディスカッション のしやすさ |
◎ | ○ 発言がタイムライン上を 常に流れるので深まりにくい |
△ 参加者が多いと発言者が かたよりがち |
◎ |
複数テーマの議論 | ◎ 俯瞰しながら、同時並行で 対話を進められる |
X | △ |
△ |
発言のしやすさ | ◎ | ◎ | X |
△ |
発言履歴の検索 | ◎ | △ 時系列にさかのぼれるが 検索機能は貧弱 |
X 録画を見直す必要があり ”検索”はできない |
△ |
時間あたりに 交換できる情報量 |
△ 整理して書くため 時間が取られる |
◎ 短文のチャットは優位性が高い |
○ | ◎ |
自由度 | ◎ 時間を気にせず じっくりテーマを掘り下げられる |
◎ | △ 地理的制約はないが、 特定の時間を拘束する |
X 特定の場所と時間を拘束 |
論理的思考力 | ◎ |
△ | △ ファシリテーション次第 |
△ ファシリテーション次第 |
運営者の手間 | △ 初期のシステム設定や トラブル対応が必要 (ユーザーが慣れるまで 多少時間がかかる) |
△ |
△ |
◎ 会場の予約や案内などは 必要だが システム的な手間は少ない |
備考 | 多人数が対話する オンラインコミュニティ向き (ファシリテーション必要) |
会話の代替として便利 |
リアル会議/研修に |
運営者も参加者も 慣れているのでストレスがない 親密度が高くなる 空気が読める (感染リスクあり) |
たとえばZOOMやWebExに代表されるウェブ会議システムは、対面式で行っていたミーティングや授業、研修を置き換えるのには極めて優れたツールです。
ただリアルタイムであるがゆえに、
・時間調整できない人は参加できない
・録画履歴はみられるが、ディスカッションには参加できない
・「終了時間」という制約があり、議論が盛り上がったり、特定の人が喋りすぎると中途半端な終わり方になる
といった様々な制約があります。
せっかく時間や空間の壁を越えられるデジタルを活用する際に「時間が合わないので参加できない」「すきま時間を有効活用できない」「時間に拘束される」というのはもったいない気がします。
またオンライン授業は提供者にとって移動コストがセーブできる、大勢に向け配信できるといったメリットは多くあるものの、本質的には一定時間、画面の前で喋り続けるといった時間を切り売りするモデルからは抜けられていないため、なかなかレバレッジが効きません。
そこでデジタル化の際には、何を「同期」で行い、何を「非同期」で行うのかを、明確に意識することが重要なポイントになってきます。
例えば教育で使うシーンを考えてみます。
ウェブ会議(同期型)では、インタラクティブ性(双方向の受講体験)を価値として提供することに集中します。例えば、参加者に問題や質問を投げかけ、自分ごととして考えてもらう様なシーンに活用します。逆に、人によって解釈に差が出たり、そもそもの理解に時間がかかるような内容は、むりろじっくりと何度でも見てもらえる「動画」や、思考を整理しながら文字ベースで議論できるディスカッションボードなどの「非同期」ツールの方が、多くの面で、参加者にとってメリットがあります。
クラス冒頭の動機付け(モチベーションアップ)や意識合わせの部分を「同期」でオリエンテーションを行います。そして途中のチームワークは、1週間といった期間を決めて「非同期」で実施、そして最終発表は、また「同期」でウェブ会議といった具合に組み合わせるといった構成が有効です。
>さらに詳しくはコラム「3つの基本形」をご覧ください。
「非同期」のコミュニケーションツールの代表格として、チャットは非常に手軽ですが、メッセージが短文で細切れになりやすいため、特定のテーマを深く掘り下げる際にはあまり向いていません。
またグループウェアなどによくある電子掲示板(BBS) には、「非同期」で複数テーマを議論できるメリットがありますが、プッシュ通知などの機能がほとんどなく、SNSのような手軽さに欠けます。またメールには、複数人でのディスカッションには向かないという機能的な制約があります。
結論として言えるのは、各ツールに優劣があるのではなく、特徴を踏まえて、ゴール(目的)に対して最適なバランスで組み合わせることです。
そして単に対面の授業をそのままデジタルで置き換えるのではなく、デジタルの特性を活かした「新しい授業」を設計する必要があるということです。
オンライン学習やスクールに限って言えば、これから下記のステップでEducation3.0へ向けて進化していくことになるはずです。
Education 1.0 : 対面授業のみ(〜2020)
↓
Education 2.0 : 同期型オンライン会議ツールによる対面授業のデジタル化
(Education 2.5 : 単なる対面授業の置き換えではない新しいオンライン授業)
↓
Education 3.0 :ハイブリッド授業(対面&同期型オンラインツール&非同期型オンラインツールの最適な組み合わせ)
メールやチャットは複数のテーマを同時並行で取り扱うのが苦手
たとえば、4名でスマホアプリに関するディスカッションしているとします。
*メールで宛先/CCに全員のメルアドを入れてやり取りしていると想定
▼時系列
・Aさん:今度のアプリには「位置情報機能」を使うといいと思うんだけど。
・Bさん:それはいいアイデアですね。
・Cさん:それに「音声認識」を使ったら面白いと思います。
・Dさん:「位置情報」は精度がまだまだ低いらしいですよ。
・Aさん:たしかにその問題はあるな。
・Bさん:Androidの最新機種はAIの性能も良いらしいですよ
・Cさん:最近は安くて機械学習機能もあるので、そちらを活用するのは?
このように同時並行でいろいろなアイデアを出しながらディスカッションしていくとさまざまな問題が起こります。
1)複数の話題をどの順番で、どう進めていくかの整理が大変
2)情報が断片化する(議論全体の流れが見えずらい)
3)過去に誰が何を言ったかが分からなくなる(検索は出来るが、大体はうろ覚えで話が進んでいくので誤解が生まれる)
4)他のメールにまぎれ業務の邪魔になる
チャットは話の流れを把握する上で、メールより優れており、短文が中心なので、会話のようなコミュニケーションには、極めて優れています。その反面、短文であるがゆえに、まとまった考えを議論したり、情報共有することは苦手です。
また時系列にメッセージが表示されるので、複数の話題(例えばAとB)が出た場合、Aについてコミュニケーションが進むと、途中からBについてレスしづらくなってしまいます。
したがって、テーマごとにチャンネルを分けるなどの工夫が必要になりますが、細分化するほど、全体の流れを把握するのが大変になります。

重要な情報が流れていってしまうチャット
FacebookをはじめとしたSNSは、気軽にグループを作り、投稿に対して「いいね」をつけたり、コメントしたりするのに大変優れたツールです。
またTwitterのタイムライン形式は、様々な最新トピックを一気にフォローする際に向いています。
ところが特定のテーマや、重要なテーマについて深掘りするような「対話」をしようとした瞬間、やり取りが難しくなります。
なぜなら多くのSNSはその性質上、新しい情報があるとどんどん流れていってしまうからです。
さらにSNS側が勝手に投稿の優先順位を判断し、重要な投稿がユーザーから見えなくなってしまうこともあります。
つまり、1:n (1人 対 大勢)で多くの人の意見にすばやく広く触れたい際には良い仕組みなのですが、n:n(大勢 対 大勢)でトピックを深堀掘りするようなコミュニケーションは苦手なのです。
このような理由から、FacebookグループやLMSに付属している電子掲示板などは、いつの間にかオンライン対話(議論)の場ではなく、FAQや、主催者がリアルのイベントを告知したり、何かをコラムを発表して、一部の参加者がレスを返す「お知らせコーナー」になります。(もともとそういう設計なので、その通りになっているだけです。)

点と点をつなげる(Connecting the Dots)
話がごちゃごちゃしてきたときに、図で整理してみると頭がスッキリした、新しいアイデアが浮かんできたといった経験はないでしょうか?
思考ツールとして有名な「マインドマップ」「フィッシュボーンチャート(魚の骨図)」「システム思考」「イッシューツリー」などは、「論点をビジュアル化(図解)する」という点で一致しています。
一見関係ない話題でも、全体から見るとつながっているという事がよくあります。
その点、フローパッドの「ツリービュー」は、ディスカッション全体を俯瞰(ふかん)的に見ることができ、ネットワークの中で交わされる議論の全体像やアイデア同士のつながりを半自動的にビジュアル化する思考ツールになります。(「タイムラインビュー」はスマホなどで議論の一気に見返す際に優れています。)
これらの特長により、ディスカッションを快適かつ効率的にすすめることができ、さらにイノベーティブなアイデアが出てきやすい環境を実現します。

答えのない時代の学び方
70%は実体験から学ぶ
米クリエティブリーダーシップセンター(The Center for Creative Leadership)の Michael M. Lombardo とRobert W. Eichingeをはじめとした研究*によれば、社会人の学びはおよそ「70:20:10」割合で構成されています。
70%は、実際の経験(OJT)を通じた学び
20%は、周りの人からのフィードバックや観察による学び
10%は、講義など正式なトレーニングを通じた学び
大人の学びの大部分は、教室での「お勉強」ではなく、実体験を通じて恥をかいたり、喜んだりしながら習得しているのです。ただし、すべての人が経験から学べる訳ではありません。自分の経験を振り返り(リフレクション/内省し)、そこから意味のあるレッスンを導き出した人だけが本当に学んでいるのです。
また10%の正式なトレーニング(フォーマルラーニング)が役に立たないかと言えばそんなことはなく、自分の経験を整理して分析したり、自分の経験を分かりやすく他人に伝える際に極めて有用なのです。(つまり70%のOJTを通じた学びの質を高めます)
したがって、フローパッドのように自分が経験した事や考えた事を言語化(Verbalization)し、第三者からフィードバックが得られ、さらに思いがけない視点を見つけられるコミュニティ(上記の20%の学びを可能にする場)を設定することで、学びは加速度的にスピードアップします。

「先生→生徒」から、「みんな」で学ぶ時代へ
ビジネス、社会問題、政治経済、教育など、世の中のほとんどの問題には明確な「答え」がありません。
したがって全員で情報や経験をシェアし、人と人のネットワークの中で知恵を出し合い、探求ながらオリジナルな答え(妥当解)を作り、現場での仮説検証を繰り返しながら、ブラッシュアップするしかありません。
このようにみんなで考えながら答えを出して行くやり方を「ソーシャルラーニング」と言います。
職場学習研究者のジェーン・ハートによれば、学ぶべきテーマによって学習は5段階(右図)のプロセスで高度化していきます。
学習スタイルの進化
レベル1)クラスルーム型
レベル2)Eラーニング型
レベル3)ブレンディング型(リアルとEラーニングのハイブリッド)
レベル4)ソーシャルラーニング
レベル5)協調学習(実務で働きながらお互いに学び合うソーシャルラーニングの発展形)
初期段階では「トレーナー」(教える人=先生)と「従業員」(教えられる人=生徒)がはっきり分かれており、知識伝授型の講義研修が主流です。新人の基礎トレーニングなどは、現在でもこの方法が有効です。(古典的なEラーニングもここが一番得意な分野です)
しかし現場は教科書で習った通りには進みません。
リアル研修は、どうしてもその場限りの学習になってしまいがちで、わかったような気になっても、応用力を試される難しいシーンに直面すると「習ったことはやっぱり現場では使えない」という形になってしまいがちです。
そこでコーチングやLMS(Learning Management System)をベースにした継続的支援を組み合わせる事で、習ったスキルを定着させ、成果に結びつけるサポートが必要になります。
そして最後には答えがないテーマについて、お互いから学び合いながら新しいやり方を生み出す社会構成主義的な学び=「ソーシャルラーニング」的な世界へと進化します。
また講師の役割は「教える人」ではなく、モチベーションを下げる障害を取り除いたり、お互いから学び会うための議論の”交通整理”をしたり、メンバーからさまざまな意見を引き出すファシリテーター的なものとなります。
つまりレベルが高くなるほど、学習は
「フォーマル型」(Formal Learning)
↓
「インフォーマル型」(Informal Learning)
へと変化するのです。
フローパッドは、インフォーマルでソーシャルラーニング的な学びをサポートします。
散らばった力をつなげる
「魂」が伝わるコミニュケーション
私(開発者)がオンライン経営大学院(MBA)運営を通じて、テクノロジーと教育の領域に関わり始めたのは2000年頃です。当時、ネットを使った授業(いわゆるEラーニング)の相談で大学関係者や講師の元を訪れるたび、よく言われたのが、
「リアルじゃなきゃ魂(熱)が伝わらない」
という言葉でした。
確かに対面のコミュニケーションには、ある種のLIVE感や「魂」が宿っているようなところがあります。それを当時のネットインフラで実現しようという提案は、講師にとって「冒涜」に近いニュアンスで捉えられました。
しかしICTインフラが急速に整う中で「魂が伝わるコミュニケーション」も徐々に可能になってきています。
また教室で行っている授業をそのままオンライン授業化しても、多くの場合失敗しますが、ウェブ会議やEラーニング、動画の特性を活かした「ストーリー(シナリオ)」を作ることで、教室以上の学習効果を達成することも可能です。
さらにインフラ面ではARやVR技術、5Gなどは、デジタル化の動きを指数関数的に加速します。
ただ「グループでの深いコミュニケーション」に限って言えば、まだまだ現時点では理想的なクラウドサービスはないと思ってます。
そこで志を共にするパートナー達と開発したのが「フローパッド」です。
「フローパッド」は人と人が直接会わなくてもよくするためのツールではありません。
むしろ、人と人との結びつきを一層深め、時間的/地理的制約を補い、コミュニティの価値を高めるためのツールです。
「未来の学習」とつなげる力
世の中には、個人のユニークで素晴らしい知識や経験が、相互につながらないために解決できていない問題が山積しています。
フローパッドがそのような状態に一石を投じられる「集合知活用ツール」にしたいと考えています。
また参加者の投稿を、広告用データとして差し出してしまう無料SNSに比べ、FlowPADでは、あくまでユーザー(コミュニティ)自身が情報を所有できます。
したがって、将来的にAIの活用やアルゴリズム化を考える際、テーマごとに構造化された投稿という知的資産(ストック)を活用でき、「未来のデジタル学習空間」のための土台を築くことが可能になります。
まだまだ歩き出したばかりのサービスですが、あらゆる問題をつなげて解決するコミュニケーションシステムとして、そして「魂」が伝わるシステムとして、先端技術を取り入れながら常に進化していきますので、ぜひご期待いただければ幸いです。